雨の詩

お昼過ぎから雨が降り始めました。



夕方洗濯をしにテラスへ出ると

年長のSくんがうろうろしています。


「どうしたの?」

「おかあさんがこないの」


お友だちが他のお母さんとSくんのお母さんを見間違えて

「Sくん、お迎えだよ」

と言ってしまったようです。



担任の先生に
「きっと見間違えちゃったんだよ。もうすぐくるからお部屋に入って待ってたら?」

と言われても

「うそじゃないもん。ほんとなんだよ。」

と、さびしそうにうつむくSくん。



「大丈夫だよ。ちゃんとお母さんきてくれるよ。
先生、お洗濯が終わるまでここで一緒に待っててあげるよ。」

「うん」



お部屋からテラスに降りる階段に二人で並んで座り、雨が降る園庭を一緒に眺めました。




あちこちに大きなみずたまりがあります。




プラタナスの木に雨があたる音が聞こえてきます。



しとしと  さわさわ
しとしと  さわさわ



すぐ後ろのお部屋では子どもたちがにぎやかに遊んでいるのに

とてもしずかな気持ちです。







「あめ、なかなかやまないねぇ」
と、Sくん。


「そうだね。やんだらお外で遊べるのにね。」
と、私。





しとしと  さわさわ
しとしと  さわさわ

しとしと  さわさわ
しとしと  さわさわ







すると、Sくんが静かな声で歌い始めました。



♪おやまに あめが ふりました
 あとから あとから ふってきて
 ちょろちょろ おがわが できました



とてもやさしい歌声でした。




突然でびっくりしたけれど

静かできれいな歌声が嬉しくて

私も一緒に歌いました。



いたずら くまのこ かけてきて
そうっと のぞいて みてました
さかなが いるかと みてました




このあと、歌詞がわからなくなって

一瞬顔を見合わせて、

それから上を向いて考えました。




なんにも いないと くまのこは
おみずを ひとくち のみました
おててで すくって のみました

それでも どこかに いるようで
もいちど のぞいて みてました
さかなを まちまち みてました

なかなか やまない あめでした
かさでも かぶって いましょうと
あたまに はっぱを のせました







途中でつっかえたり、まちがえたりしながら、

そのたびにちょっとだけ顔を見合わせて確かめあいながら

最後まで一緒にうたいました。



歌い終わるととっても幸せな気持ちになりました。

今度はゆっくり顔を見合わせて、

ふたりでにっこり笑いました。



とてもしずかで、しあわせなじかんでした。